最近読んだ本
今日は久しぶりに読書の話題です。
あまり読んでいなかった女性作家の本を読んでみようということで、最近(といっても2か月ほど前)読んだ本2冊。まだ読んでいなかったのが恥ずかしいくらいの作家だ。初めて読む作家の場合、何から手をつけるのか迷うのだが、今回は直木賞受賞作という、安直な選び方をした。
角田光代『対岸の彼女』
まず、角田光代の『対岸の彼女』。読んでみて、それほど相性のいい作家ではない気がした。もちろんこれは個人的な感想で、作品に対しての私の読解力や感受性が不足しているということはある。
この話では、章ごとに小夜子と葵という二人の女性の物語が交互に語られる。小夜子は保育所に預けるような子どもを持つ三十代の女性で、葵は高校生だ。最初の章で小夜子が専業主婦をやめて働こうと決心するところから話が始まり、勤め先の女社長の名前が葵であることが分かる。第二章で、冒頭の文から、こちらの章の主人公が楢橋葵という名であることが示されているので、読書は最初からこの小説の構造を知った上で読んでいくことになる。
私の感想としては、小夜子の章と葵の章では、小夜子の章の方が読んでいて話に入りやすく、葵の章の方が作り物感があった。女子高の人間関係の描き方など、ややステレオタイプな感じがした。また、葵の親友となり逃避行の相手となるナナコがフェイドアウトしたままになってしまうのも気になった。
最後に二つの物語が結び付くところで、ひょっとすると大きなどんでん返しがあるのではと思いながら読み進めていったが、普通の展開だった。ただ、これは考え過ぎだったかもしれない。最後まで読ませる筆力はさすがだったが、どちらかというと、女性の読者の共感を呼ぶ作家なのかなという気がした。
辻村深月『鍵のない夢を見る』
次に読んだのが、辻村深月の『鍵のない夢を見る』。こちらは短編集で、五つの短編が収録されている。個人的には話の世界も文体も、相性のいい作家という感じがした。通勤のほんの短い時間に少しずつ読み進めたのだが、電車が駅に着く時、続きを早く読みたいと思いながら本を閉じた。
この短編集で描かれているのは、地方都市で生きる女性たちの身に起きるできごとなのだが、妙にリアリティーがある。例えば、最初の短編「仁志野町の泥棒」は、仲のいい同級生の母親が盗癖のある女性だったという話だ。こういう話は細部の何気ない描写が重要だと思うが、この小説ではその家族に対する周囲の人々の態度や反応、主人公の心理など、物語の世界が実にリアルなものとして心の中に入ってくる。主人公は女性なのだが、置かれている状況や心情を想像しながら、しっかりと話の中にに入っていけたのは、私にとって相性がいい作家なのだろう。また違う作品も機会があれば読んでみようと思った。
また、この五つの短編はすべて、最後にこちらの思わぬ方へと話が展開していく。話の持って行き方についてはかなり強引なものもあり、悲劇的な結末になる作品もあるのだが、私はなかなかおもしろく読めた。ちなみに、このブログを書いている時には、次の作品を読んでいるのだが、それはまたどこかで。