ナラネコ日記

私ナラネコが訪ねた場所のことや日々の雑感、好きな本のこと、そして猫のことを書き綴っていきます。

私の読書 ~ 最近読んだ本 2023年 其の一

最近読んだ本

 今日は久しぶりに読書の話題でも。

 ここ数か月で読んだ本の感想。主に電車に乗る時のために買って読み、気に入った本は家で続きを読んだりする。新しく出た本というわけではないが、その時の気分で買うので、かなり以前に出たベストセラーをブックオフで買ったりする。今回も女性作家の本3冊。

宮部みゆき『理由』

 宮部みゆきの直木賞受賞作。高級マンションで4人が殺害されるというショッキングな事件が起こり、その奥に潜む謎を解き明かしていくのだが、手法として、事件がすでに解決して過去のものとなった時点から、事件の関係者が事件のことを振り返り、ドキュメンタリーのように描くという形をとっている。探偵や刑事が事件を解決していくという定番の形ではなく、事件に関係する人々やそれぞれの家族のことが綿密に描かれていくので、話はなかなか前に進んで行かない。

 かなりプロットを練り上げないと書けない小説で、宮部みゆきの筆力はすごいというほかはない。読みごたえのある小説だったが、私は前に読んだ『火車』の方がよかった。『火車』は謎を解く刑事の存在があり、その視点から話を読み進めていけばよかったのだが、『理由』は章ごとに視点が変わり、しっかりと咀嚼しながら読みこんでいかないといけないので、エンターテインメントとして読むには少し重かった。

宮部みゆき『理由』

湊かなえ『リバース』

 湊かなえの本は、『告白』をすでに読んでいて、これが2冊目。湊かなえといえば『告白』がベストと言われているが、私はこの作品の方が良かった。主人公の男性は、学生時代に、ゼミ仲間と行った旅行先で、一人の友人を事故で亡くすのだが、その死に関する秘密を他の仲間とともに隠し続けている。ところが彼の恋人のもとに、彼を「人殺し」と呼ぶ告発の手紙が届くことにより恋人が去っていき、彼はその手紙を送った人物をつきとめようとする。

 プロットはシンプルで、登場人物の心理もしっかり描かれ、話の中に入っていきやすい。何より、一気に目が覚めるような結末がいい。この結末に関しては、ちょっと無理があるのではないかという評もあるが、私は話の流れの中で十分納得できた。

湊かなえ『リバース』『告白』

辻村深月『ツナグ』

 辻村深月は、数か月前に『鍵のない夢を見る』を読んで、かなり相性のいい作家だと思った。これが2冊目。「ツナグ」とは一生に一度、死者との再会をかなえてくれるという使者のこと。したがって、ジャンルでいうとファンタジーということになるのだろう。こういった小説の場合、非現実的な設定の中、どれだけ読者に小説の中の世界に感情移入して読ませるかがポイントだが、話の中にしっかりと入って読むことができたのは表現や話の作り方が上手いのだろう。

 たとえば、最初の「アイドルの心得」。依頼者の平瀬愛美は、急死したアイドルの水城サヲリに会うことを依頼する。なぜ相手が肉親などではなくアイドルなのかということを示すエピソードが中盤あたりで、話の流れの中で自然に出てくる。このあたりの展開が巧みで、どの話もおもしろく最後まで読むことができた。

 ちなみに、続編にあたる『ツナグ 想い人の心得』も読んでみたが、これは前作の方がよかったという印象だった。

辻村深月『ツナグ』