曇り空
今朝は雨雲が空を覆い、薄暗い朝となった。朝の散歩に出かけたが、空一面暗灰色。あまり写真も撮らなかったので、読書の話題でも。
横溝正史
ミステリーの思い出。横溝正史の話。
実は、横溝正史の作品は、それほどたくさん読んでいない。読んだのは『本陣殺人事件』『獄門島』『犬神家の一族』『八つ墓村』くらいだ。
最初に読んだのが『本陣殺人事件』で、これは本格ミステリーとしてのトリックもすばらしいが、怖い小説である。この話を読んだのは高校生ぐらいだと思うが、殺人の夜の描写など背筋がぞくっとするような感覚があった。話は戦前の岡山県の旧家で、婚礼の後の夜中に離れ座敷で、新郎と新婦が日本刀で血まみれになって惨殺されているという話である。金田一耕助が登場する最初の作品であり、殺人が次々と起きるわけでもない比較的短い作品だが印象は強かった。
次に読んだのが『獄門島』で、これは国内のミステリーの中でも最上位に評価されている。終戦直後、古い因習が残る瀬戸内海の孤島の旧家での連続殺人が描かれており、日本的なものをトリックにも生かした、横溝正史の魅力が詰まった作品だ。結局、いちばん印象に残る2作品を初めに読んだことになる。
金田一耕助が登場する横溝正史の本格ミステリーは、終戦後の1950年代くらいまでに書かれたものだが、1970年代に角川が力を入れて文庫本を出し、その後次々と映画化もされて再ブームとなった。私が読んだのは、もちろんその再ブームの時の文庫本だ。
その時はテレビドラマにもなり、金田一耕助を映画やテレビで演じた俳優は30人くらいいる。ネットを見ると一覧が載っていた。初代は片岡千恵蔵で、再ブームになる前の初期の頃には高倉健の名前もある。これはさすがにイメージが違うだろうという感じ。原作に忠実な演じ方をしたのは石坂浩二あたりからだが、私はテレビドラマの古谷一行のイメージが強い。
金田一耕助の防御率
ところで、以前に見た記事で「探偵の防御率」というのがあった。ミステリーではしばしば連続殺人事件というものがあって、探偵が関与していながら第二、第三の殺人が起きたりする。その場合、名探偵ではあるが新たな殺人を防げていないのである。そこで、その探偵が登場する主要作品の中で、探偵が事件に関与してから殺された人間の数を合計して作品数で割れば、探偵の防御率が出るというわけだ。
例えば小説の最初に殺人が起こり、探偵がやって来て最初の事件の解決だけでその小説が終われば、防御率は0である。結果、何人かの探偵の中で、防御率が一番悪いのは金田一耕助だった。金田一耕助のシリーズは連続殺人が多いので、仕方ないと言えば仕方ないのである。
雑誌の連載などでは読者の興味をつなぐために第二、第三の殺人を起こす場合もあるが、ミステリーで連続殺人が起きる場合には、やはり話の展開の上での必然性がほしい。その点上手いと思うのはやはりクリスティーで、「アクロイド」「オリエント急行」等、被害者が一人でも最後まで読者の心をひきつける。逆に「そして誰もいなくなった」「ABC」等連続殺人が起きる話はストーリー上の必然性が納得できる。さすがだと思う。
写真が少ないので、先週土曜日に撮った写真でも。