最近読んだ本から
今日は読書の話題。
私は電車に乗る時、本を携帯していないと落ち着かないので、必ずカバンに本を入れておく。近年読書量はめっきり減ったが、時々新しい本も買って読んでみる。
私は女性作家の作品をあまり読まなかったのだが、この夏、青春18きっぷで出かけた際、宮部みゆきの本を2冊読んで、おもしろかったので、今まで読んでいない女性作家の本を読んでみようかという気になった。手始めに読んでみたのが恩田睦の本。ちなみに宮部みゆきも恩田睦も1960年代前半生まれなので、私と同世代の作家だ。何を読もうかと思ったが、本屋でいちばん新しい文庫本で短編が数多く入っている『歩道橋シネマ』を買ってみた。私は新しい作家の小説を読むとき、お試しに短編集をよく買ってみる。
『歩道橋シネマ』
全部で18の短編が収録されていて、2013年から19年にかけて雑誌に発表された作品をまとめたものとなっている。ファンタジー、SF、ホラー、ミステリーといった感じで、作品の色合いが様々あった。作者の作風自体が単一のジャンルにとらわれていないのだろうし、雑誌の「〇〇特集」といった企画に合わせて書いたものを集めて短編集としたものなので、そうなるのだろう。また、巻末に全作品についての作者自身のコメントが記されているのも、楽屋裏が少し見えるようでよかった。作品の完成度というよりも、実験的な試みや作者の試行錯誤の過程が感じられる作品集だったように思う。(個人的な感想です。)
それではいくつかピックアップして感想を書いてみる。
「線路脇の家」
冒頭の作品。エドワードホッパーという画家の絵と、「私」が見たある光景を重ね合わせて、話が進む。日常の中に小さな違和感を発見してそれが次第に膨らんでいくという展開は私の好みで、どう着地させるかというところが気になって読み進めた。結末は無難な着地点という印象だった。
「あまりりす」
4番目の作品。ホラー味にユーモアが加わった小説。こういう感じで書き進めて、空中分解しないで持っていけるのはさすがという感じだった。
「悪い春」
6番目の作品。これはかなり怖い小説だ。何が怖いと言って、本当に現実になりそうな気がするところが怖い。
「ありふれた事件」
16番目の作品。都会である悲惨な事件が起こる。奇妙な事件で大勢の人の前であったにもかかわらず、事件の関係者があることに関して口を閉ざしている。これも怖い話だが、私が好きな展開だった。実は読みながら結末を予想していて、全く違う方向性の結末を予測していたのだが、外れてしまった。
「歩道橋シネマ」
最後の作品。作品集の題名になるだけあって、作者がいちばん気に入っている作品なのだろう。他の長編などは読んでいないが、詩的な雰囲気があり、作者の資質がいちばんストレートに表れた作品ではないかと思った。
☆写真がないと寂しいので、昨日と今日の朝の写真を数枚紹介します。