青春18きっぷと読書
久しぶりに読書の話題。
今年の夏は青春18きっぷを買って、すでに3回使用したのはこのブログにも書いた。私は電車の中では読書が進む。長時間乗車する時、手元に本がなかったら禁断症状が出るので、こういう時には必ず文庫本を2,3冊くらい持っていく。新しく買った本に加えて、すでに読んだことのあるお気に入りの本を1冊くらい。これは新しい本が合わなかったときの保険のようなものだ。
新しく買った本2冊は車中で読み終えたので、その感想でも。今まで読んだことのない作家の本を読んでみようということで、今回買ったのは今村翔吾の『八本目の槍』と宮部みゆきの『火車』。今村翔吾は近年出てきた歴史小説作家だが、宮部みゆきは今まで読んでいなかったのが不思議なくらいで、何となく手を出していなかった。最初の1冊でその作家との相性が決まってしまうこともあるので、初めて新しい作家の小説を買う時は結構迷うのである。それでは感想を。
『八本目の槍』
この本は1回目の舞鶴へ出かけた列車内でほぼ読み、残りを2回目に読んだ。この小説は、いわゆる「賤ケ岳の七本槍」と呼ばれる武将たちの姿を描き出すことによって、「八本目の槍」である石田三成の姿を浮き彫りにしていくという手法で書かれた歴史小説だ。「七本槍」の武将たちと三成は、若い時期に秀吉に小姓として仕えた同僚で、それぞれ違った道を歩んでいくのだが、小姓時代の姿から成長していく過程での様々な思いや悩み、葛藤を人間味あふれる姿として描いている。文章も読みやすく、おおむねおもしろく読むことができた。
気になった点を少し。私は歴史小説はほとんど読まないのだが、かなり昔に司馬遼太郎の『関ヶ原』は読んだ。これは文庫本で上中下3冊に渡る長編なのだが、集中して一気に読み通したことを覚えている。したがって、私の中の石田三成のイメージが『関ヶ原』の三成像が元となっている部分が大きく、やや違和感を覚えたところがあった。(『関ヶ原』の三成像も、作者が文学的にふくらませて造形したものであることは言うまでもない。)今までに書き尽くされているこの時代を小説にするには独自の歴史観や切り口が必要で、それが『八本目の槍』の三成像ということだろうが、あまりにも優秀過ぎて、これほど千里眼的に見通せる力があるなら関ヶ原であんな負け方はしないだろうと思ってしまった。したがって、いまいち話の中に入り込むことができない部分も残ったのだった。
私は藤沢周平の小説が好きで、20冊くらい読んだ。藤沢周平の作品は時代小説で、江戸時代という設定はあるが登場人物や舞台は架空のもので、その中で作者は自分の思う世界を自由に描き出すことができるのだが、歴史小説は史実という枠組みがあるだけに、どんな切り口で臨むかということが重要なのだろう。
下の写真は18きっぷの3回目、琵琶湖方面に行った時の賤ケ岳の写真で、ブログにまだ載せていなかったもの。
宮部みゆき『火車』の感想は、また次の機会に。