ナラネコ日記

私ナラネコが訪ねた場所のことや日々の雑感、好きな本のこと、そして猫のことを書き綴っていきます。

漱石との出会い ~ 其の三 

雨の一日

 朝からやはり雨模様。ちょっと体を動かさないと調子が出ないので傘を差して少し外を歩く。田畑の横を通ると、雨に濡れた花や野菜の実にはそれなりの趣があり、写真に収めた。

 仕事から帰宅後は外にも出ず家にいる。このブログで三週間ほど前に読書の話題で漱石について書いたのが、中途半端なまま終わっていたので続きを書くことにする。(よろしかったら、6月10,11日のブログを見てください)

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雨に濡れた野の花

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雨に濡れた畑の作物

子どものころ読んだ「坊ちゃん」

 6月10日、11日の日記の続き。

 小学生のころ、集英社から出ている。「カラー版 日本の文学」の中の「坊ちゃん」を読んだことはすでに書いたが、正確には、この本には「坊ちゃん」だけではなく。漱石の複数の作品が収録されている。「坊ちゃん」は長編小説というより、中編というのが適当な長さなので当然なのだが、今改めて見返すと、作品の選び方が絶妙であることに感心する。

絶妙な作品選択

 約三百ページのうち、ほぼ半分を『坊っちゃん』が占めている。そして残りの百五十ページに収録されているのが「二百十日」、「文鳥」、「永日小品(抄)」、「硝子戸の中(抄)」であり、小学生であった私は漱石の魅力を存分に味わうことができた。中でも私がいちばん気に入っていた作品が、なぜか「二百十日」で、これはほとんど全編が二人の人物の会話で成り立っている、落語のような小品なのだが、その会話のリズムが心地よく、繰り返し読んでいたことを覚えている。

「坊ちゃん」とテレビドラマ

 「坊ちゃん」という小説の面白さを語り出すときりがないので、一つだけ。

 これは以前、誰かのエッセイかネット上の文章か何かで読んで印象に残っている内容の受け売りなのだが、「坊ちゃん」はテレビドラマや映画に数多くなっていて成功しているが、「三四郎」は映像化しようとしてもうまくいかない。理由は、「坊ちゃん」の主人公は極めて能動的で自分から行動していくが、「三四郎」の主人公は終始受け身で(恋愛に関しても煮え切らず、小説の最後の方で、やっと美禰子さんに会いにいくと結婚が決まっている)、映像化してもおもしろくなりようがないということだった。もちろん文学の世界としてのすばらしさは別であることは言うまでもない。

 私自身は、小学生のとき、テレビドラマの「坊ちゃん」を見て、たいへんおもしろかった記憶がある。主人公の坊ちゃん役が竹脇無我で、Wikiで調べると1970年放送なので、私が四年生のときである。原作はテレビ放映の少し前に読んでいたのだろう。

 覚えているのは、役者がみんな本で読んだイメージ通りだったこと。それからマドンナ役の山本陽子が、セリフはないのだが、歩いている姿(人力車に乗っている姿だったかもしれない)がしばしば流れていたことだった。原作ではマドンナは、話題に出るだけでほとんど姿を現さないのだが、ドラマでは結構脚色されて活躍したりする。さらに「多くの男性のあこがれの対象となる女性」という辞書にも載る意味にまでなるのだから、漱石はすごい。

 ということで、話は尽きないし、他の作品の話もしたいが、また、いつか気が向いたときに。