ナラネコ日記

私ナラネコが訪ねた場所のことや日々の雑感、好きな本のこと、そして猫のことを書き綴っていきます。

私の読書 ~ 北杜夫①

朝からの雨

 今日は朝から雨模様。しとしとという形容がぴったりの秋雨である。少し歩こうと外に出たが、五分ほどで切り上げた。そこで今日は読書の話題。昔よく読んでいた北杜夫を取り上げる。

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雨に白い花が濡れていた

私と北杜夫

 私が北杜夫の作品を始めて読んだのは、小学校5、6年生くらいで、「どくとるマンボウ航海記」がスタートであった。このブログで漱石の初期の作品を読んだのが小学校の4年生くらいだということを書いたが、その少し後の時期になる。そしてほぼ同時期に長編の「楡家の人びと」も読んでいた。というのは、「楡家の人々」はNHKの銀河テレビ小説という夜の10時ごろの番組でドラマ化され、小説を読み終えてから見ていた記憶があるのだが、ネットで調べるとそれが1972年で私の小学校6年生の時なのである。「楡家の人びと」についてはまた次の回で述べる。

どくとるマンボウシリーズ

 北杜夫は大歌人である斎藤茂吉の息子である。1960年に「夜と霧の隅で」で芥川賞を受賞するのとほぼ同時期に「どくとるマンボウ航海記」がベストセラーとなったことから、シリアスな純文学とユーモアに富んだエッセイの両面で世に認められることとなった。一般的にはどくとるマンボウシリーズの方で知られており、私が中学生になった時、結構周囲で読んでいる者は多かった。当時から若者の読書離れは言われていたが、今よりは読んでいたように思う。北杜夫以外では遠藤周作のエッセイ、筒井康隆、星新一の小説やショートショートなどは、中学生あたりがよく読んでいた。私が中学生の時に北杜夫の知名度調査を中学生に行ったらおそらく80%くらいは行ったと思うが、今やったらその十分の一くらいだろうか。

 どくとるマンボウシリーズは、最初の「航海記」以外では、中高生には「青春記」が人気があったように記憶している。旧制高校の古き良き時代の思い出が若い世代には魅力的だったのだろう。私は、この2作品ももちろんだが、「昆虫記」が好きで、これは私が昔、昆虫が大変好きな少年であったことによる。下の写真が当時読んだ本だが、何回も読んだ上、私は中学生くらいまで文庫本のカバーを外して読む癖があったので、ひどく汚れている。

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擦り切れるまで読んだ「どくとるマンボウ昆虫記」

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「南太平洋ひるね旅」 この本も何回も読んだ

独特のユーモア

 好きな人なら分かるのだが、北杜夫のユーモアは独特で、いったんはまったら中毒性のある世界である。説明するより読んでいただくのがいちばんなのだが、最近あまり見ない良質の笑いだと思う。マンボウシリーズ以外に、小説でもシリアスではない笑いの溢れるものがあり、私が読んだ中では「船乗りクプクプの冒険」(これは一応ジャンルは童話)「怪盗ジバコ」など、たいへんおもしろく読んだ。

 ただ、これらの作品を今の若い人がおもしろく読むかどうかはちょっと分からない。時代を超えて感動を生む文学というものはあるはずだが、笑いは時代によって変化していくからだ。

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独特のユーモアに包まれた作品

北杜夫編はまたどこかで続きを書きます。