『トムは真夜中の庭で』
今日は久しぶりに子どもの頃の読書の話。フィリパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』を取り上げる。
この本を読んだのは、小学校3年生くらいだったように思う。もちろん自分で買った本ではなく親からあてがわれたものだが、夢中で読んだ。カーネギー賞を受賞したイギリスの児童文学の名作であることは、読んだ当時はもちろん知らなかった。
簡単に話の前半のあらすじを書いてみる。
少年のトムは、弟のピーターがはしかにかかったために、アランおじさんの住む都会のアパートに預けられ、いっしょに遊ぶ友だちもなく退屈する。ところがある深夜、階下のホールの大時計が13回鳴るのを聞き、こっそりと階下に降り、邸宅の裏口を開けると、そこにはあるはずのない魅力的な庭園が広がっている。
翌日の昼間、トムは裏口を開けて確かめてみるが、そこはゴミ箱が置かれている狭い空き地があるだけだった。庭園は真夜中にだけ姿を現す存在だったのだ。そのことを知ったトムは毎晩、庭園に抜け出していくようになる。奇妙なことに庭園に姿を現す人たちはトムのことに気づかない。しかし一人だけ、ハティという少女だけはトムのことが見えていた。トムはハティと仲良くなり庭園でいっしょに遊ぶようになる。
思い出すこと
このブログに書くとき、数十年ぶりにさっと読み返した。そして、なぜ当時それほど夢中になって読んだか思い返してみた。
一つは、主人公のトムがおそらく自分と同じ年齢くらいの男の子ということで、感情移入して読んでいたのではないかということだ。それから、私自身が本を読んでいない時は、自然の中に入って一人で虫とりなどをするのが好きな子どもだったので、この庭園のイメージがたいへん魅力的だったこともある。
主人公と同じ目線で物語の中に入って行けるということは、読書という体験をする上で幸福なことだ。この話には感動的な結末があり、もう少し年長になってから読んでいたら途中で気づいていたのかもしれないが、まったく想像せずにトムの心情に重なる読み方ができたのはよかった。
印象に残る場面がいくつもある。トムが庭園で眠ってしまった後、一度だけ普段より幼いハティに出会う場面。この場面はなぜか当時読んでいて背筋がぞくっとした記憶がある。それから、二人が最後にスケートでイーリーの大聖堂に向かう場面、等々。ランサムのツバメ号シリーズの「長い冬休み」もそうだが、川や湖がスケートで滑れるほど凍ってしまうという英国の冬は別世界の感じがする。
私は昔行ったことのある場所を再訪するのが好きな人間だが、昔読んだ本を再読するというのは、それと同じ楽しみがあるのだった。
今日のブログの内容には関係ありませんが、写真が少なくて寂しいので、土曜日に撮った大阪のベイエリアの写真を2枚ほど。