今日は読書の話題
今日も寒い日だった。6時45分ごろから朝の散歩で田畑の中の道を歩く。案山子代わりにTシャツと帽子を棒に取り付けてある場所を通ると、棒が倒れていた。何か寒々とした気分が増す。もう少し歩くとミカンの木に実がなっていた。ミカンの実は暖かい色で何かほっとさせてくれる。
今日は久しぶりに読書の話題。ミステリーの思い出の続きで、怪盗ルパンシリーズの話でも。
モーリス・ルブランのルパン物との出会い
アルセーヌ・ルパンといえば、フランスの作家モーリス・ルブランが生み出した怪盗であるが、今の日本では、漫画のルパン三世の方が有名で、若い世代では、本家のルパンシリーズを読んだことがない人の方が多いだろう。
私がルパンシリーズを読み始めたのは、中学校から高校にかけてだと記憶している。ドイルのシャーロック・ホームズ物やクリスティの作品はよく読んでいたが、いわゆる食わず嫌いというやつで、なんとなく手を出していなかったのが、読み始めたらおもしろくてどんどん読んでいった。私が読んだのは新潮文庫の「ルパン傑作集」というやつだが、最初に読んだのが「強盗紳士」で、これはルパン物の入門編としてはよかった。
ルパンは変装の名人で、まさに神出鬼没の怪盗である。一応ガニマールという、ルパンを追う警部がいるのだが、いつも取り逃がしルパンにしてやられる。今読めばお決まりのパターンだが、最初にそれを考えて小説にしたのはルブランなのだから、すごいものである。
ルパンとホームズの対決
ところで、ルパンシリーズには、英国の名探偵シャーロック・ホームズが登場する。「強盗紳士」に収録されている「遅かったりシャーロック・ホームズ」が初登場なのだが、一応敬意を表してガニマールよりは頭の切れる探偵として描かれているものの、本家のホームズとはまったくキャラクターが違うのである。これにはドイルから抗議が入ったとかで、ルブランはそれ以降の作品では、「シャーロック・ホームズ」のアナグラムの「エルロック・ショルメ」として登場させている。
ただ、日本語訳の本では、シャーロック・ホームズとして訳されている場合が多く、読者はそう思って読むと、常にルパンの引き立て役になっており、本家ホームズとのギャップを感じるのである。私がルパンシリーズの長編でいちばんおもしろかったのが「奇岩城」だったのだが、その作品にもホームズは登場し、最後ルパンに迫るところまで行く。さすがと思うのだが、結末での描かれ方は・・・。これから読まれる方もいると思うので、これくらいに。
ルパンシリーズの翻訳
私が読んだ新潮文庫の「ルパン傑作集」は、すべて堀口大学の訳である。この方は詩人、フランス文学者としてたいへん高名な方だ。ただ、ルパン物の翻訳に関しては、あまり読みやすい訳ではなかった。私が好きな「八点鐘」は推理小説的な味わいが強い短編集なのだが、もう少しこなれた訳なら状況が分かりやすいのにと思ったりもした。