ナラネコ日記

私ナラネコが訪ねた場所のことや日々の雑感、好きな本のこと、そして猫のことを書き綴っていきます。

子供の頃の読書 ~ ツバメ号シリーズ 其の三

秋の気配

 朝は雨も降らず、外は初秋のような空気であった。田畑の中の道を歩いているとたいへん気持ちよい。水田の稲が随分成長していることに気づく。天気予報では午後にひと雨来るようだったが、やはり昼ごろに強い雨があった。

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秋が近いことを感じさせる水田の稲

ツバメ号シリーズ~子供たちの性格

 今日は読書の話題。8月14日の続きでツバメ号シリーズの三回目となる。

 今回は登場人物のキャラクターなどについて、私自身の勝手な感想を書きたい。

 主な登場人物の子供たちは8人。男3人、女5人なので、男の子のほうがキャラクターを色分けしやすいのは当然だろう。ウォーカー家の4人は真面目で思慮深い長男ジョンといたずら好きの末っ子のロジャ。現実的な長女スーザンと空想好きで感覚派の次女ティティというように性格がはっきり分けられ、そこに強烈な個性を持つナンシーを登場させるので、どうしても妹のペギー独自の色は強く出せなくなってしまう。(最初の方では「おしゃべりな子」という設定であったように思うが)

 第4巻で登場するDきょうだいは、それまで登場してきた6人が体育系とすれば文科系(ディックは科学部、ドロシアは文芸部といったイメージ)の子供である。その二人が出会って間もない場面で、スケートが上手く滑れることによって、6人の心をとらえて仲間になるといった展開はたいへん巧みであるが、性格としては、科学好きのディックはジョンやロジャとは全く違った性格であるのに対し、ドロシアは、空想家という共通点をもつティティという強い個性を持った女の子がすでに登場しているため、やや色が弱く感じられる。(これらの私の感想は、もちろん作品に対する否定的な感想ではありません。)

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Dきょうだいが初めて登場する「長い冬休み」

感情移入したキャラクター

 子供が物語を読むとき、登場人物の誰かに感情移入して読むというのはよくあることだ。私が最初に読んだのが小学校2年か3年のときである。最初の3巻は登場する男の子は二人だけで、ジョンに感情移入することはとてもできなかったので、消去法でロジャということになる。

 それが第4巻でディックが登場したら、感情移入する対象がディックとなった。私自身体育系ではなく、読書や昆虫採集が好きな子供だったので、視点はDきょうだい寄りになるのである。ただ、前回書いた通り、オオバンクラブのメンバーが登場する2巻は、当時どうもうまく登場人物のキャラクターに馴染めなかった。この2巻は今読み返してみたら印象が変わるかもしれない。

翻訳の難しさ

 このシリーズの訳者の神宮輝夫さんが先日死去された。私が子供の頃読んだのは1960年代に出版されたものだが、近年、神宮さん自身が全面改訳した新版が出版されている。このあたりの事情は分からないが、理由の一つとして、昔は使えていた語句の中で、現在は人権上の配慮から使えないものが多いということがあるのではないか。たとえば旧版では「土人」という訳語がしばしば用いられているが、新版では他の語になっているようだ。この語などは必ずしも差別的意味合いを含むわけではないが、そう誤解される語句は使わないことになっているのだろう。このテーマは簡単に論じられるものでもないので、これくらいにとどめておく。

 このシリーズについて話は尽きないのだが、三日分も書いたので、とりあえずはここまでにする。(下の写真は私が過去に撮った中で、このシリーズの舞台の湖水地方のイメージに近いものを1枚。確か琵琶湖。)

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このシリーズのイメージに近い写真を1枚