宮部みゆき『地下街の雨』
今日は読書の話題でミステリー編です。
1冊目は宮部みゆきの『地下街の雨』。もう30年ほど前に出た作品だ。
50ページ前後の短編が5編、20ページほどの短編が2編収録されている。ミステリー仕立ての話やホラーに分類されるような話も含め、いろいろなテイストのものを集めた短編集だった。ただ、長編型の作家ということもあり、出来がいまいちと思う作品もあった。よかったのは、作品集の題名にもなっている「地下街の雨」と「さよなら、キリハラさん」。
それではその2編について感想を。
「地下街の雨」
主人公の麻子は、同僚との結婚が挙式直前で破談になり、会社を辞め、地下街にある喫茶店で働いていた。その店に毎日やってきて、同じ席に座る女がいて、麻子は彼女と話を交わし、打ち明け話をするようになる。だが、麻子の会社時代の同僚の淳史が偶然店にやってきたことから、女は次第に異常な行動をとるようになる。そして……。
この話は最後のどんでん返しが鮮やかで、すばらしかった。途中まで、狂気めいた行動をする人物に主人公が振り回され、ホラーっぽい雰囲気で話が進んで行くのが、合理的な結末を迎えるというのは、ミステリーの醍醐味で、読者が気持ちよく騙される話だった。
「さよなら、キリハラさん」
「わたし」は両親と弟、祖母の5人家族だが、ある夜、急に耳が聞こえなくなる。一時的に聞こえなくなる現象は一家に共通して起こり、それは家の中だけで発生することが分かる。そんなある日、キリハラという中年の男性が家に現れ、自分は宇宙からやってきた「音波Gメン」で、自分が音を消していると言う。
この話も、SFっぽい話かと思わせておいて、最後にどんでん返しがある。「ハイテク耳栓」だったという結末は、ミステリーとして読むと苦しいが、キリハラのキャラが味があり、おもしろく読むことができた。
それ以外の作品では、「勝ち逃げ」も、プロットがよく練られた作品だと思ったが、なぜ、「勝子伯母さん」が「勝ち逃げ」になるのかという肝心のところが、どうも腑に落ちなかった。

湊かなえ『Nのために』
もう1冊、港かなえの『Nのために』について簡単に。
湊かなえの本は、『告白』と『リバース』読んでいて、これが3冊目だ。『告白』はもちろん、『リバース』がかなり良かったので、期待して読み始めたのだが、これは全然ダメだった。amazonの評価などはそこそこいいので、私が個人的に合わないのかもしれないと思ったのだが、どうなのだろう。
高層マンションに住む金持ちの夫婦が殺害されるという事件が起こる。それにかかわる4人の男女が、10年後にそれぞれ一人称で語り、真相が明らかになっていくというプロットだが、設定にアラが目立って、読んでいてしんどかった。例えば、将棋がストーリー展開のポイントになっているが、その扱い方が雑で、作者は将棋のことを知らないまま書いているような気がした。また、登場人物の心理や行動も、不自然なものが多かった。
前半から、叙述トリックの匂いがする書き方だったので、何か変だなというところがカギになって、どんでん返しがあるのかと思っていたが、そうでもなかった。個人的には、前に読んだ『リバース』が☆5つくらいなら、☆2つくらいの感じだった。
