東野圭吾『真夏の方程式』
今日は読書の話題でミステリー編です。東野圭吾の『真夏の方程式』。
15年前に書かれた長編ミステリーで、物理学者の湯川学が謎を解決する、いわゆるガリレオシリーズの中の1作。
小学校5年生の恭平は、夏休み、両親の仕事の都合で、海辺の町、玻璃ヶ浦にある親戚が営む旅館緑岩荘に預けられる。恭平は海へ向かう電車の中で、海底鉱物資源開発の説明会に参加するため玻璃ヶ浦に向かう湯川と出会い、湯川も緑岩荘に宿泊することになる。
緑岩荘には恭平の伯母である川畑節子とその夫重治、そして娘の成美が住み、成美は玻璃ヶ浦の環境保護運動に加わっている。恭平が訪れた翌朝、緑岩荘に宿泊していた塚原正次という男が、海辺で変死体となって発見される。県警は当初、堤防から誤って転落した事故死と判断するが、塚原が元警視庁捜査一課の刑事だと分かり、現地を訪れた警視庁の管理官、多々良は、遺体の状況から、塚原の死は単なる事故ではなく他殺の可能性があると見抜き捜査が始まる。
捜査一課の刑事、草薙俊平は多々良から事件を捜査するよう命じられ、後輩刑事の内海薫とともに湯川と連絡を取りながら調査を進める。そして、塚原がこの土地を訪れた理由が、16年前に担当したある殺人事件の犯人として、すでに服役を終えた仙波という男と関係していることが分かる。
湯川は事件の真相に挑み、事件の背後にある、過去の殺人事件に関する秘密と、塚原の死の真相を明らかにする。
こういうストーリーで、多くの要素が複線的に絡み合って動いていく。過去の殺人事件とのかかわり、そして被害者である塚原が、なぜ玻璃ヶ浦を訪れ、緑岩荘に泊り、海底鉱物資源開発の説明会に参加していたのかといったことが謎として提示されるのだが、終盤になって、それが一本の線にまとまって収束していく。そして過去の殺人事件についても、塚原の死の真相についても、意外な犯人が分かる。そのあたりの論理的なミステリーとしての構成はさすがだと思った。
叙述の形式は三人称で、章によって視点が変わる。湯川の視点から語られることはなく、恭平、成美、地元の警官西口、草薙の4人の中で視点が変わり、最終章に近い章では仙波、節子の視点でも語られる。この叙述の形も、トリックを形成する仕掛けの一つとなっている。
全体的にかなり複雑な話なのだが、読んでいて混乱せず、頭にストーリーがすっと入っていくのは、しっかりプロットを練り上げて書いているのだろう。ただ、過去の殺人事件に関しては、犯行に至る動機が弱く、犯行の描写があっさりしすぎかなという印象だった。また、2つの事件の全容が、登場人物の回想だけで、探偵役の湯川の手で明らかにされず、犯人が裁かれないまま終わってしまうところも気になった。論理的な謎解き、意外な結末という点では、本格的なミステリーを読んだという気分にしてくれた作品だった。
