ナラネコ日記

私ナラネコが訪ねた場所のことや日々の雑感、好きな本のこと、そして猫のことを書き綴っていきます。

私の読書 ~ 村上春樹③

雨模様

 今日は雨のようだ。朝から外を歩いても、いつもは朝日が見える東の山の上に灰色の雨雲がかかって、いまにも降り出しそうである。週末は、少し季節が逆戻りしたような気候になる模様。

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朝日が見えない東の空

村上春樹の小説以外の作品

 今日は読書の話題で、村上春樹の3回目。

 小説について2回書いたので、今回は小説以外の作品についていくつかピックアップして、個人的な感想を書いてみたい。近年の作品は読んでいないので、少し古いものを中心に。

アンダーグラウンド

 『アンダーグラウンド』は1997年に発表された。その2年前に起きた地下鉄サリン事件の被害者や関係者に作者が聞き取りをして、その内容をまとめた作品だ。ジャンルとしてはノンフィクションにあたる。たまたまある月曜日の朝、地下鉄のその車両に乗り合わせていたために、理不尽な犯罪の被害に遭った人たちの物語。その一人一人の言葉を丹念に拾い上げ、読者に伝わりやすい文章にしている。

 私は個人的には、インタビューを受けた60人を主人公とした短編小説集という感覚で読んだ。ノンフィクションを社会的な問題の追求に主眼を置いたものとするなら、そういう読み方はしなかったわけだ。

 1995年は1月に阪神・淡路大震災が起こり、3月に地下鉄サリン事件が起こるという、社会不安が大きく広がった年だった。したがって私もこの年の印象は強い。震災では、奈良県は被害は出なかったが明け方に大きく家が揺れ、それで目覚めたこと、横にまだ幼い子どもが寝ていてどうしようかと思ったことなど、今でも覚えている。

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『アンダーグラウンド』

村上春樹、河合隼雄に会いにいく

 『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』は題名の通り、心理学者の河合隼雄との対談集だ。発行は1996年で、『ねじまき鳥クロニクル』が発表され、『アンダーグラウンド』執筆の取材を行っていた時期にあたる。編集にあたって、二人の対談はできるだけそのままの流れで手を加えずに記され、さらに互いに後から説明を補足したい事項があれば、フットノートという形でページの上部とページの下部に、それぞれの考えを記載している。丁寧に作られた対談集という印象を受けた。

 対談の序盤で、デタッチメント(かかわりのなさ)からコミットメント(かかわり)に、自分の大事なものが変わってきたという言葉が村上春樹によって語られ、この時期からの創作に対する姿勢の変化を端的に示している。

若い読者のための短編小説案内

 『若い読者のための短編小説案内』は、作者が海外の大学で行った日本文学に関する授業をもとにして、6人の作家の作品を取り上げて論じたものだ。取り上げられた作家は、一般的な若い読者にそれほどなじみがあるとは思われない「第三の新人」と呼ばれる人々を中心とした6人で、作品もマイナーなものが多い。私も読んだことのある作品は2編だけだったのだが、おもしろかった。自分が個々の作品に触れていなくても興味深く読めるというのは、村上春樹自身の小説に対する考え方を語るという要素が強いからだと思う。いちばんなるほどと思ったのは庄野潤三の『静物』論。

 その他、おもしろかったものの書名だけ上げると、『遠い太鼓』(旅行記)『翻訳夜話』(柴田元幸との対談集)。

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『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』他