青空文庫で読む童話
昨日に続いて読書の話。
青空文庫で童話を読むのもいいという話をしていたと思うが、今日話題にするのはアンデルセンの童話。先日、病院の待合室かどこかで読んだのだが、幼い時に、児童文学全集のようなもので読んだときとは、印象が少し変わっていた。
アンデルセンの童話
アンデルセンの童話といえば、「マッチ売りの少女」「みにくいアヒルの子」等々、誰でも題名を知っている作品がいくつもある。どれも珠玉の名作であるが、今、改めて読んで印象に残ったのは「もみの木」である。
「もみの木」
一応あらすじを書いてみよう。
主人公は一本のもみの木。森の中ですくすく育っているもみの木は、太陽や風に今がいちばんいい時だから楽しむように言われるが、早く成長して森を離れ、もっと楽しいことに出会いたいと思っている。そしてある冬、ついに切られて街に運ばれる。ある家の居間で全身をクリスマス用にろうそくや星で飾られたもみの木は幸福の絶頂にいるが、クリスマスが終わった途端に屋根裏に片づけられる。暗い屋根裏部屋には誰もいない。そのうちに子ねずみたちがやってきて、もみの木は話を聞かせてやる。初めはねずみたちも面白がって話を聞いていたが、そのうちどこかへ行ってしまう。春になって人々は屋根裏からもみの木をひっぱり出す。自分の姿が見えないもみの木は、花の咲いている庭を見て、楽しんで生きていこうと体を伸ばすが、枝はすっかり枯れて黄色くなっている。もみの木はここでやっと現実に気づく。そして自分の一生を振り返りながら、薪として燃やされていく。
「もみの木」の悲しさ
あらすじだけでは分からないかもしれないが、悲しい話である。幼い日に読んだ時にはそれほど印象に残らなかったのが、今読んで胸に沁みるというのは自分が年取ったせいかと思うと、またそこで切ない気分にさせられる。
「マッチ売りの少女」の悲しみは、死んでいくその少女の悲しみで、読者はそこに感情移入していくのだが、「もみの木」の悲しみは人生に普遍的に流れている悲しみである。木と言う存在は擬人化するには人間から遠いものだが、アンデルセンは巧みに描いている。
私などが書くのはおこがましいが、表現として上手いなと思ったのは、屋根裏部屋に投げ込まれたもみの木とねずみたちのやりとりが、場面としてしっかりと描かれていることである。また、もみの木が切られるときの痛みの描写や、クリスマスの夜に飾りとして付けられた金紙の星が、最後に子どもによってもぎ取られる場面の描写等、印象に残る表現が多い。
青空文庫ですぐ読めるので、よかったら。
今日は雨で散歩に行っていないので以前撮った猫です。
4日前にアップしたYouTubeです。